※2025年2月期・3月期などの最新決算数値(一部見込み・速報値含む)に基づいた、食品スーパーを主軸とする企業の営業収益(売上高)ランキングです。

注記: イオンリテール(食品部門で約1.8兆円超)やイトーヨーカ堂(約8,150億円)などの総合スーパー(GMS)は、一般的に「食品スーパー専門ランキング」からは除外されることが多いですが、規模としてはこれらを上回ります。
2024年〜2025年の業界動向
- 営業収益の伸び
2024年度は業界全体で前年比約3〜5%増の増収基調となりました。客数は伸び悩む局面もありましたが、食品インフレに伴う客単価の上昇が収益を押し上げました。一方で、光熱費や人件費の高騰が利益を圧迫しており、「増収減益」となる企業も目立ちました。
- 成長の背景
- 「即食・内食」ニーズの深化: 共働き・単身世帯の増加により、店内で調理された惣菜(デリカ)の需要が極めて高く、各社が売場面積を拡大しています。
- 価格転嫁とPB(プライベートブランド): 物価高を受け、安価なPB商品(イオンのトップバリュ、セブンプレミアム、ライフのスマイルライフ等)の販売比率が高まり、利益率の維持に寄与しました。
- 物流・DX投資: 2024年問題(物流規制)への対応として、AIによる自動発注や共同物流の導入が進みました。
- 特筆すべきトレンド
2024年から2025年にかけての日本の食品スーパー業界は、「物価高への適応」と「陣取り合戦の最終局面」に入ったと言えます。
- 単に食品を売るだけでなく、「製造小売(SPA)」化(自社工場での惣菜製造など)や、「リテールメディア」(店舗を広告媒体にするIT戦略)など、小売の枠を超えた収益モデルの構築が急務となっています。今後は、トライアルのような「テクノロジー派」と、ヤオコーやライフのような「売場提案・惣菜派」の棲み分け、あるいは融合がさらに進むでしょう。
営業収益それぞれの成長要因
2025年(2024年度決算)の食品スーパーマーケット業界上位5社の営業収益の伸びについて、それぞれの成長要因とあわせて詳しく解説します。
1位:ライフコーポレーション
【営業収益の伸び:約 5.4%増(見込み)】 業界トップのライフは、単一のスーパーマーケットチェーンとして盤石な成長を見せています。
- 成長の背景: 「BIO-RAL(ビオラル)」に代表される高品質なプライベートブランド(PB)が絶好調で、健康志向の顧客を掴んでいます。
- また、首都圏のドミナント戦略(特定地域への集中出店)が功を奏し、都心部でのシェアをさらに拡大しました。ネットスーパーの売上増も寄与しています。
2位:バローホールディングス
【営業収益の伸び:約 5.8%増】 30期連続増収という驚異的な記録を更新し、1位のライフを猛追しています。
- 成長の背景: * 主力のスーパー事業において、生鮮食品を強化した「デスティネーション・ストア(わざわざ行く店)」戦略が成功しました。
- 傘下にある「タチヤ」や「八百鮮」といった個店経営に強い子会社が、大型店にはない機動力で売上を伸ばしており、グループ全体の底上げに貢献しています。
3位:U.S.M.Holdings(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)
【営業収益の伸び:約 15%前後(いなげや連結による大幅増)】 2024年にいなげやを連結子会社化したことで、売上の規模が一段階跳ね上がりました。
- 成長の背景: 純粋な既存店成長以上に、M&A(合併・買収)による規模の拡大が最大の要因です。
- マルエツ・カスミ・マックスバリュ関東に、いなげやが加わったことで「首都圏最強連合」としての地位を固め、物流やシステム共通化によるコスト削減を進めています。
4位:トライアルホールディングス
【営業収益の伸び:約 12.0%増】 上位陣の中で唯一の2ケタ成長を記録しており、業界で最も勢いがあります。
- 成長の背景: 独自の「IT×小売」モデルが爆発的な成長を支えています。AIカメラやレジカートによる徹底した効率化で低価格を実現しました。
- 年間30店舗以上のペースで地方郊外へ出店を加速させており、ドラッグストアやディスカウントストアの顧客を吸収しながら、スーパーの枠を超えた成長を続けています。
5位:フジ
【営業収益の伸び:約 1.0%増】 2024年3月にマックスバリュ西日本と完全統合し、新生「フジ」としての歩みが始まりました。
- 成長の背景: *統合直後ということもあり、売上の伸びは緩やかですが、中四国・兵庫エリアでの圧倒的な仕入れパワーを手に入れました。
- 「毎日が安い(EDLP)」商品を強化し、統合に伴うポイントカードの共通化や販促の集約によって、消費者の利便性を高めながら収益性の改善に注力しています。
各社の具体的な成功事例
各社の具体的な成功事例と、業界全体が「なぜこれほど伸びているのか」という背景を解説します。2025年〜2026年にかけての最新トレンドを反映した内容です。
企業の具体的成功事例:ヒット商品とDX施策
各社、独自の色を出すことで「価格競争」以外の価値を作り出しています。
【商品・ブランドの成功事例】
- ヤオコー:圧倒的な「惣菜」の提案力
- 事例: 「ヤオコーの二層仕立てのメンチカツ」や「手作りおはぎ」といった看板商品に加え、最近では「ポキ丼」や「チキン南蛮」など、専門店の味を再現したデリカが20代〜40代の支持を急拡大させています。
- ポイント: 自社専用の「デリカ・生鮮センター」を新設し、店舗での手作り感と工場での効率化を両立させた「製販一体」モデルがヒットの源泉です。
- ライフコーポレーション:PB「BIO-RAL(ビオラル)」の爆発的ヒット
- 事例: 自然派・健康志向のPBブランド「BIO-RAL」が、スーパーのPBという枠を超えて単独店舗を出すほどの人気に。
- ポイント: 物価高の中でも「健康への投資」を惜しまない層をターゲットにした戦略が、高単価・高利益率の達成に寄与しました。
【DX・オペレーションの成功事例】
- トライアル:世界をリードする「スマートショッピングカート」
- 事例: レジ待ちゼロを実現する「Skip Cart」。2025年時点で250店舗近くに導入され、台数は2万台を超えています。
- ポイント: 単に便利なだけでなく、カートのタブレットに表示される「クーポン」や「レコメンド」によるついで買いを誘発。客単価を約10%向上させるという、データに基づいた「売れる仕組み」を構築しました。
- ベルク:徹底した「標準化」と独自決済「ベルクペイ」
- 事例: どの店舗に行っても同じレイアウトという徹底した標準化に加え、独自アプリでの決済やAI需要予測による「品切れゼロ」の追求。
- ポイント: 財務経理部門のDX(mfloowの導入など)も進めており、バックオフィスから店舗まで「無駄を削ぎ落とした運営」が、高い営業利益率の秘密です。
業界全体が伸びている「3つの本質的理由」
一見、物価高で消費が冷え込みそうに見えますが、営業収益(売上高)が伸びているのには理由があります。
- 「食品インフレ」による客単価の上昇
最も直接的な要因は、商品1点あたりの単価が上がったことです。
- 2024年〜2025年にかけて、多くの食品メーカーが値上げを行いました。スーパー側も適切に価格転嫁を進めた結果、「売れた個数が同じでも、売上金額は増える」という構造になっています。
- 外食・コンビニからの「需要流入」
物価高の影響で、消費者が「外食を控えて家で食べる(内食・中食)」傾向を強めています。
- 対外食: 1食1,500円の外食を控え、スーパーで500円の贅沢惣菜を買う「プチ贅沢」需要。
- 対コンビニ: コンビニよりも安く、かつ品質も高まってきたスーパーの弁当や冷凍食品へ顧客がシフトしています。
- DXによる「機会損失の削減」と「商圏拡大」
これまで「人手不足で棚が空いていた」「チラシを見て来たのに商品がない」といった機会損失が、DXによって解消されています。
- AIによる精密な発注や、ネットスーパー(Amazon Freshとの連携など)による実店舗以上の商圏カバーにより、これまで取りこぼしていた需要を根こそぎ拾えるようになったことが、収益の底上げに繋がっています。
食品スーパー営業利益ランキング TOP10(2025年最新決算)
※2024年度(2025年2月期・3月期など)の実績・確定見込みに基づいています。

上位企業の利益成長コメント
- オーケー:独自の「EDLP(毎日安売り)」モデル
- コメント: 売上ランキングでは7位前後ですが、利益額では国内SM界の圧倒的王者です。
- 理由: 特売チラシを打たない(広告費抑制)、什器を極力使わない、段ボールのまま陳列する等の徹底したローコスト運営により、安売りをしても高い利益率(6%超)を叩き出しています。2024年は関西進出への先行投資がありながらも、既存店の圧倒的な回転数で利益を伸ばしました。
- ヤオコー:高収益な「デリカ・センター」戦略
- コメント: 日本で最も「利益の出し方が上手いスーパー」と称されます。
- 理由: 利益率の高い「惣菜」を自社センターで集中製造し、店舗で仕上げる仕組みが確立されています。2024年に買収した「せんどう」の寄与に加え、AIを活用した「値引きの最適化(ロス削減)」が利益を数億円単位で押し上げました。
- ベルク:標準化がもたらす「最強の再現性」
- コメント: 利益額こそ6位ですが、増益率(約17%増)は業界トップクラスです。
- 理由: 「どの店舗も同じ作り、同じ作業」を徹底することで、新店を出してもすぐに黒字化できるのが強みです。2025年は自社物流網の効率化がさらに進み、競合他社が人件費増に苦しむ中で、生産性を維持し増益を達成しました。
- ハローズ:24時間営業×高効率
- コメント: 地方スーパーながら、利益率5.8%という驚異的な数値を誇ります。
- 理由: 瀬戸内圏に集中出店する「ドミナント戦略」により、物流費を極限まで抑えています。24時間営業は人件費がかさむと思われがちですが、夜間の品出し作業を標準化することで、日中の接客効率を高める独自モデルが完成しています。
業界全体が「稼げる」ようになっている理由
売上の増加以上に、2025年は各社が「稼ぐ力(利益体質)」を強化しました。
- 「値上げの浸透」と「ロス削減」:
メーカーの値上げに対し、以前のような無理な対抗値下げをせず、適切に価格転嫁ができるようになりました。また、AI需要予測により「売れ残り(廃棄ロス)」が激減し、利益が残る体質へ変化しました。
- PB(プライベートブランド)の主役化:
利益率がNB(ナショナルブランド)より10〜20%高いPB商品の販売比率が、物価高の影響で急上昇しました。「安いから買う」だけでなく、「ライフのビオラルだから買う」といった指名買いが、高利益を支えています。
- 労働生産性の「IT改革」:
セルレジの普及、AIによる自動発注、電子棚札の導入により、店舗スタッフの作業時間が大幅に短縮されました。人件費が高騰する中で、「より少ない人数で、より多く売る」仕組みがようやく実を結び始めたのが2025年です。
総括コメント
2025年の利益ランキングから見えるのは、「規模が大きくても利益が出るとは限らない」という小売の真理です。オーケーやヤオコーのように、独自の強み(安さの仕組みや惣菜の味)を持ち、ITや物流を自前でコントロールしている企業が、インフレ局面をチャンスに変えています。
2026年(2025年度決算予想)の食品スーパーマーケット業界は、「巨大化」と「二極化」がさらに加速する激動の1年になると予測されます。最新の各社業績予想と、業界再編の動きを根拠としたランキングを作成しました。
2026年 営業収益(売上高)予測ランキング

2026年の最大のトピックは、トライアルHDが西友を傘下に収めた(あるいは統合的提携を加速させた)ことによる1兆円突破です。これにより、長年「SMの盟主」であったライフを抜き去り、一気に業界トップに躍り出る見込みです。U.S.M.Hも「いなげや」をフル連結したことで、悲願の1兆円達成が現実味を帯びています。
2026年 営業利益 予測ランキング
売上とは対照的に、利益面では「効率性」と「ブランド力」を持つ企業が上位を占めます。

利益面ではオーケーとヤオコーの2強体制が揺るぎません。特筆すべきはトライアルHDで、西友との統合による一時的なコスト増(システム統合や店舗改装)がありながらも、「スマートレジカート」等のIT技術を西友の店舗へ導入することによる生産性向上が、中長期的な利益成長の鍵となります。
2026年の業界動向:3つの予測根拠
- 巨大連合による「仕入れ力」の格差
トライアル+西友、USMH+いなげやといった「1兆円クラブ」の誕生により、メーカーに対する交渉力が一段と強まります。これにより、中小スーパーは価格競争でさらに不利になり、地方チェーンのさらなる再編が誘発されるでしょう。
- 「リテールメディア」の収益化
これまで「商品の売買」だけだったスーパーの収益構造が変わります。トライアルやライフが進めている「店内のデジタルサイネージやアプリでの広告収入」が、営業利益の数%〜10%を支える新たな柱として定着し始めます。
- 「タイパ(タイムパフォーマンス)」への全振り
人手不足の影響で、2026年は「レジ待ち」が致命的なリスクとなります。
- 技術的解決: トライアルのカート、ベルクのスマホ決済などがデファクトスタンダード(事実上の標準)へ。
- 商品形態: 「袋から出してすぐ食べられる」ミールキットや冷凍食品の売場面積が、生鮮3品(肉・魚・野菜)の面積を浸食し続ける。

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