〜「正しい商売」の旗のもとに、スーパーマーケットはいかに進化するのか〜
地域密着型の食品スーパーマーケットチェーンとして、関東一円で確固たる地位を築くエコス(7520)。消費者の生活防衛意識の高まりや、原材料・エネルギー価格の高騰、そして新型コロナウイルスの感染拡大と収束という激動の環境下で、エコスはどのような経営戦略をとり、成長を続けてきたのでしょうか。過去5年間の連結業績を単年度で徹底分析するとともに、今後の企業活動の指針となる「正しい商売」の哲学と具体的な重点施策を深掘りします。
過去5年間(2021年2月期〜2025年2月期)の連結業績ダイジェスト



エコスの過去5年間は、外部環境の急激な変化に対応し、収益力を高めてきた時期と言えます。特に純利益は、特別損失(減損損失)の計上により大きく変動していますが、本業の儲けを示す営業利益は着実に成長軌道を描いています。
| 決算期 | 営業収益(百万円) | 営業利益(百万円) | 当期純利益(百万円) |
| 2021年2月期 | 136,014 | 5,738 | 1,554 |
| 2022年2月期 | 137,651 | 5,901 | 3,898 |
| 2023年2月期 | 122,749 | 4,375 | 1,610 |
| 2024年2月期 | 130,039 | 5,714 | 3,578 |
| 2025年2月期 | 137,176 | 6,020 | 4,131 |
単年度分析:激動期における戦略と成果
1. 2021年2月期:コロナ禍の特需とM&Aのシナジー
この期は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う内食化の特需を背景に、売上が前期比7.5%増と大きく伸長しました。さらに、株式会社与野フードセンターを子会社化したことによるシナジーも寄与しています。営業利益は前期比33.8%増と大幅な増益を達成しましたが、特別損失として減損損失25億60百万円を計上したため、最終的な当期純利益は減益となりました。
2. 2022年2月期:増収増益の達成と本業の好調
前年の好調を維持しつつ、営業収益は前期比1.2%増、営業利益は同2.8%増と増収増益を達成しました。内食化傾向が根強く、商品調達コストの見直しや在庫効率の改善に努めた結果、販管費の増加を上回る営業総利益の増加を実現しています。また、前期と比べて特別損失が大幅に減少した結果、当期純利益は前期比150.7%増の38億98百万円と、過去5年で最も高い成長率を記録しました。
3. 2023年2月期:コスト高騰と競争激化の波
この期は、ウクライナ情勢やエネルギー・原材料価格の急騰に加え、競争環境の厳しさが増したことで、収益構造に大きな圧力がかかりました。結果として、営業利益は前期比25.9%減の43億75百万円に落ち込みました。また、前期に続き特別損失として減損損失等20億82百万円を計上したため、当期純利益は前期比58.7%減の16億10百万円と大幅に減少しました。厳しい外部環境への対応として、エコスは生産性改善への更なる深耕に取り組みました。
4. 2024年2月期:収益力の大幅な改善
社会経済活動の正常化が進む中で、エコスはV字回復を果たします。営業収益は前期比5.9%増の1,300億39百万円、営業利益は同30.6%増の57億14百万円と大幅に伸長しました。お客様の生活防衛意識に応える「エブリデイ・ロープライス」への取り組みに加え、自動発注システムの利用拡大やPOSレジシステムの更新などによる生産性向上が奏功しました。特別損失の減少も寄与し、当期純利益は前期比122.2%増の35億78百万円となりました。
5. 2025年2月期:M&Aと既存店強化による持続的成長
この期は、株式会社ココスナカムラを連結子会社化したこと、既存店のリニューアル強化、物流拠点「ふじみ野センター」の新設など、成長戦略の実行が明確に表れた期となりました。営業収益は前期比5.5%増の1,371億76百万円、営業利益は同5.4%増の60億20百万円と、着実な増収増益を達成しました。当期純利益も41億31百万円(前期比15.4%増)と、過去5年で最高の水準を記録しています。
エコスの未来戦略:旗印は「正しい商売」
今後のエコスグループの企業活動の指針は、社是である「正しい商売」を徹底することに集約されます。地域密着型の食品スーパーマーケットとして、以下の重点施策を通じて、持続可能な成長と収益力の向上を目指しています。
- 商品施策:生鮮専門店に負けない売場づくり、惣菜部門の品揃え拡充、自社ブランドの強化、そして「エブリデイ・ロープライス」の推進。
- 店舗運営施策:自動発注システムの活用、従業員のマルチジョブ化推進による生産性向上、SNS等による情報発信による集客強化。
- サステナビリティ:「環境に配慮したスーパーマーケットの経営」「あらゆる人材が活躍できる職場づくり」を柱とした、持続可能性を意識した経営。
2026年2月期の業績見通しと中間決算の評価
エコスは2026年2月期の業績予想を公表していますが、これに加えて最新の第2四半期(中間期)決算が発表されました。中間決算の内容と通期見通しへの進捗状況を見てみましょう。
第2四半期(中間期)連結業績(2025年3月1日〜2025年8月31日)


| 項目 | 中間期実績(百万円) | 対前年中間期増減率 |
| 営業収益 | 70,783 | 5.6%増 |
| 営業利益 | 3,005 | 5.2%減 |
| 経常利益 | 3,089 | 7.0%減 |
| 中間純利益 | 2,559 | 14.3%増 |
中間期は増収減益となりました(純利益を除く)。営業収益は堅調に伸びたものの、物価上昇による消費者の節約志向の高まりや、競争の激化が影響し、利益面では前年同期比で減少しました。しかし、特別利益の計上などにより、最終的な中間純利益は前期比で14.3%の増益を確保しています。
通期業績予想と進捗状況
中間期の実績と通期予想(連結)を比較すると、以下の通りです。
| 項目 | 中間期実績(A)(百万円) | 通期予想(B)(百万円) | 進捗率(A/B) | 前期比(予想) |
| 営業収益 | 70,783 | 140,000 | 50.6% | 2.1%増 |
| 営業利益 | 3,005 | 6,000 | 50.1% | 0.3%減 |
| 経常利益 | 3,089 | 6,000 | 51.5% | 4.5%減 |
| 当期純利益 | 2,559 | 4,000 | 64.0% | 3.2%減 |
中間期の実績は、営業収益・営業利益ともに通期予想に対して約50%と、計画通りに推移しています。特に、中間純利益は予想の約64%に達しており、好調な滑り出しと言えます。
しかし、通期予想では、厳しい経済環境とコスト高騰の影響を織り込み、営業利益・経常利益・当期純利益は減益を見込んでいます。今後は、下期にかけて競争がさらに激化する可能性があり、企業活動の指針である「正しい商売」と「重点施策」の徹底的な実行が、通期予想の達成、そして利益面での上振れを実現する鍵となるでしょう。


コメント