🚀 無印良品、V字回復の秘密と「第二創業」への挑戦
無印良品を運営する良品計画は、今まさに「第二創業」とも呼べる大きな変革期にいます。
2024年8月期、そして2025年8月期と、連続で営業収益と各段階利益の過去最高記録を更新し続ける快進撃は、アパレル・小売業界全体で見ても異例の成功です。
かつては「売上は伸びるが利益率は低下」という課題を抱えていましたが、ここ数年でその構造を劇的に改善。このV字回復を支える「攻め」と「守り」の戦略、そして2027年に向けた強気の計画を深掘りします。
1. 2027年を見据えた「新しい中期計画」の核心
良品計画は、過去の中期計画で目標達成に苦戦した反省から、改めて現実的かつ挑戦的な「3ヵ年ローリング計画(2025〜2027年度)」を発表しました。
新中期計画の「ゴール」:数値目標(2027年8月期)



この目標は、「毎年10%以上の成長を続け、利益率を一桁から二桁近く(10%)に高めていこう」という、極めて強気なものです。特に、利益率を再び9%台、そして最終的には10%まで回復させることが、最大の焦点となります。
新中期計画を支える「具体的な戦略」
このゴールを実現するため、以下の5つの柱で戦略を推進します。
- 出店・グローバル展開:
- 東南アジアを戦略的市場とし、人口増・成長市場を狙った積極的な新規出店を加速します。
- 既存市場である東アジア(中国・台湾など)では、安定的な出店を継続します。
- 商品と利益体質の強化:
- 単なる「安い日用品」だけでなく、付加価値の高い商品への比重を高め、客単価と満足度を向上させます。
- 「安さ+無印らしさ」の両立を追求し、商品一つひとつの収益力を高めます。
- デジタルとブランド力:
- データベースを活用し、顧客にとって「感じの良いオンライン」体験を広げます。
- 単なる販促としてのマーケティングを超え、社会とのつながりを重視した「ブランド力強化」へ舵を切ります。
- ESG・地域共創:
- “ソーシャルグッド事業部”を立ち上げ、地域課題や環境問題に積極的に関わることで、「社会とつながるブランド」としての無印らしさをアピールします。
- 人材戦略:
- 多様な人材を育成し定着させ、社員が地域に根ざした「オーナーシップ」を持つ経営へと進化させます。
2. V字回復を実現した「3つの核心的な秘密」

なぜ、良品計画はここまで劇的なV字回復を果たし、強気な計画を立てられるようになったのでしょうか。それは、「守り」「攻め」「融合」の三位一体となった確固たる戦略を実行したからです。
秘密その1:利益率を劇的に改善した「守りの改革」🛡️
好業績の土台は、まず利益構造を盤石にするための徹底した「守りの改革」です。
1. 生産体制の内製化による「コスト革命」
外部に頼っていた生産工程の一部を自社でコントロールする「生産体制の内製化」を推進しました。これにより、品質を保ちつつ、無駄なコストを徹底的に削減することに成功し、営業総利益率(稼ぐ力)の改善に大きく貢献しました。また、海外事業での「値下げ抑制」も、利益を押し上げる大きな要因となりました。
2. 赤字事業の「外科手術」:欧米事業の黒字化
長年の課題であった欧米事業の構造改革を断行しました。不採算店の閉鎖や子会社の清算といった「外科手術」によって、欧米事業は2023年8月期に通期で黒字化を達成。これまでグループ全体の足を引っ張っていた要因が、一転して利益を牽引するドライバーの一つに変わりました。
3. 為替の追い風
海外売上比率の高い良品計画にとって、近年の急激な円安も追い風となりました。海外事業の利益を円換算する際に、「為替による押し上げ影響」が営業利益率向上に貢献しています。
秘密その2:成長を加速させた「攻めの出店と土着化」戦略 🗺️
「守り」で利益体質を整える一方、「攻め」の成長戦略として、店舗数の拡大と地域密着を両立させる「土着化(どちゃくか)」を推進しています。
1. 生活圏への積極出店と店舗の大型化
出店戦略を、従来の都市中心部から、人々の「日常生活の基本」を支える立地へと転換しました。郊外の食品スーパーマーケット隣接店を中心に出店を加速したことで、生活のついでに立ち寄りやすくなり、特に食品や日用消耗品の売上を大きく伸ばしています。
2. 地域に根差す「土着化」の深化
単なる出店拡大に留まらず、無印良品の企業理念を体現するため、地域自治体や企業と連携し、地域固有の課題解決や特産品開発を行う「地域事業部」の取り組みを強化。地域商社「カニミライブ」の設立や、地域拠点「MUJI BASE」の展開など、商品販売に留まらない領域へコンセプトを広げています。
秘密その3:顧客との絆を深める「商品とデジタルの融合」🤝
無印良品の強みである「商品力」と、デジタル技術を融合させることで、顧客との結びつきをより強固にしています。
1. 売上を牽引する「生活雑貨・食品」
コロナ禍を経て人々の生活に不可欠な商品群が成長を牽引しています。特にスキンケアや日用消耗品、そして食品といった「生活雑貨」が好調に推移し、増収の大きな原動力となりました。
2. アプリとSNSを活用した「デジタルの進化」
スマートフォンアプリ「MUJIアプリ」(旧MUJI passport)を通じた継続的なマーケティング活動が、実店舗への集客に貢献。ダウンロード数は約7,000万に達し、実店舗とオンラインを融合させた強固な顧客接点とファンコミュニティを構築しています。アプリをリニューアルし、顧客が社会貢献に参加できる仕組み「MUJI GOOD PROGRAM」を導入するなど、エンゲージメントの強化を図っています。
3. 「普遍的な強み」が無印良品の成長を支える

これらの戦略の背景には、無印良品が創業以来持ち続けている「独自のコンセプトと商品開発力」という揺るぎない強みがあります。
「わけあって、安い。」の普遍的な価値
無印良品の根幹は、「不必要なものを削りながら、品質は落とさない」という「わけあって、安い。」のコンセプトです。
- 素材の選択: 地球環境や生産者に配慮した素材を選び、見栄えのために捨てられていたものなども活用。
- 工程の点検: すべての工程で無駄を省き、コスト削減と合理性を追求。
- 包装の簡略化: ブランドロゴを極力排除し、商品そのものの価値を前面に出したシンプルなパッケージ。
この、極限まで無駄を削ぎ落としたシンプルで機能的なデザインは、「これでいい」という普遍的な価値を提供し、競合との明確な差別化要因となっています。
「くらしの全領域」を提案する商品力
衣料品、生活雑貨、食品、家具、家電など、約7,000品目という多岐にわたる商品を、シンプルで統一されたデザインで提供できる点は大きな強みです。顧客は、生活のあらゆるシーンで無印良品の商品を選ぶことができ、「感じ良いくらし」をトータルで実現できます。
💡 まとめ:社会と共創する「グローバルブランド」へ
無印良品の中長期計画は、単なる売上アップではなく、「地域社会に役立つグローバルブランド」へ進化する挑戦です。
良品計画は、2027年に売上8,800億円・利益790億円を達成できるか、そしてその先の2030年に3兆円企業という野心的な長期目標に向けて、盤石な経営基盤と理念に基づく「土着化」戦略を軸に、挑戦を続けています。


コメント